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リコール署名偽造 冒頭陳述要旨

リコール署名偽造 冒頭陳述要旨  ~中日新聞様より引用~

 

 

犯行に至る経緯
田中孝博被告は、愛知県の大村秀章知事を実行委員会会長とし
、二〇一九年八月に開催された国際芸術祭「あいちトリエンナー
ーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」の内容を巡り、美容外科
「高須クリニック」の高須克弥院長らによる知事への解職請求の動き
を把握した。 昨年五月下旬ごろ、周囲にリコール活動をするよう促
し、六月一日、田中被告が事務局を取りまとめることが決まった。
 六月二日、高須院長が代表となった政治団体「お辞め下さい大村秀章

愛知県知事 愛知100万人リコールの会」を設立し、記者会開いた

田中被告は事務局長に就き、署名簿作成の事務作業など活動全般

取り仕切った
 山口彬被告は、ポスティングサービスを行う広告関連会社の社長で

リコール活動に協力すると高須院長らと友好関係を築けてビジネス

チャンスになると考えた。ポスティングに無償で協力すると申し出て

リコールに関するはがきを県内の住宅などにボスティングした
 田中は、リコールの会を設立したころから県選管に頻繁に連絡し

名簿の記載方法や収集方|法などを問い合わせていた。
 リコールに必要な法定署名数は八十六万筆奈だったが、九月三十日

時点で、正規の署名は六千七十三筆しか集まっていなかった

同月下旬ごろ、他人の氏名などを無断で記載する署名偽造を企てた


書き写し用の名簿購入]
田中被告は十月一日、スマートフォンで名簿業者を探し、料金を
調べた上で、雅人被告に氏名など無断で書き写して署名を偽造す
ることや、名簿購入の発覚を防ぐため、愛知県から離れた業者から
名簿購入するように指示した。雅人被告は名簿業者を探し、東京の
業者に偽名を使って電話をかけ、名簿を購入したいと告げた。
 田中被告は十月三日、地元の同県稲沢市に住む二十歳以上

二百四十七人が掲載されている名簿を雅人被告に購入させ、内容を確認
した。その後、雅人被告に県内の二十歳以上の八十万人分の名簿を
|購入させることにした。六日、名簿の購入代金にするため、リコール

会名義の預金口座から計八百万円を引き出した後、雅人被告に現金を

渡し、名簿業者から五百三|十三万円で約八十万人分の名簿データを

購入させた


犯行の準備
田中被告は、十月七日ごろから購入した名簿のデータを自分の複数の

パソコンに保存し、署名簿に市区ごとに書き写すため、そのデータを

編集した。名簿のデータの印刷などをするため、コピー用紙を大量

購入した。署名簿の生年月日欄は和暦で記載する必要があったため

西暦で記録されていた名簿データについて、十日、リコールの会

スタッフに対し名簿極秘でお願いします」など書いたメールに

名簿データファイルを添付して送信。データに記録されていた人物

生年月日を西暦から和暦へ変換することなどを依頼した
 同時期にリコールの会の一員に対し、十一万枚の大量の署名簿用紙

印刷業者に発注させ、署名偽造の準備を進めた

 十月八日、署名を偽造させる人を集めるため、山口被告の協力を得

ようと考え、広告関連会社を訪問し、「解職請求をするため署名

代筆をする人集めをお願いしたい」という趣旨の依頼をしたところ

山口被告から「署名の代筆って、だめですよね」と言われた

田中被告は「しょせん署名なんていちいち本人確認しないし、こんな
ことみんな普通にやっている。リコールが成立しなかったら、署名簿

戻ってくるので、すぐに廃棄すればばれない」などと説得した。
 十月九日ごろ、山口座から電話で費用の前払いや会社で責任を負わ

ないことなどを条件に依頼を引き受けると言われ、了承した。
十二日、山口被告に「名線に書かれている住所、名前、生年月日を名簿

から署名簿に書き写してもらう。署名したとする日付は八月二十日から

十月二十五日までの間としてほしい」と依頼。指印を押すこと依頼

したが断られた。偽造に必要な期間などを打ち合わせし、一日あたり

七十五人、一人あたり八時間程度、十月二十~二十三日の四日間

署名偽造の作業をすることを決定。山口被告は下請け会社に指示

佐賀市佐賀県青年会館を会場として確保させ、人材紹介会社

アルバイトの手配をさせた。
 十月十九日、山口被告に三百五十万円の小切手を交付し、署名偽造の

費用計四百七十四万円一部を支払った。雅人被告に署名簿用紙や

名簿データを印刷した紙が入った段ボールを佐賀市内のホテル運搬

させた。


犯行状況
田中被告は、十月二十日、雅人被告を通じ下請け会社の担当者に
「人分の署名欄がある署名簿には六、七人分の氏名を書き写す」
「署名日を土曜、日曜の日付を多めにする」などと指示した。担当者は

購入した名簿に記載された氏名などを無断で書き写させる署名偽造

佐賀県青年会館で開始した
 山口被告から大量の署名簿が搬入されていることなどの報告を受けた

、偽造の期間を延長して、署名の収集期限の十月二十五日以降も

七十万~百万人分の署名を書き写すよう指示した。 山口被告はアルバイト

追加で確保することになった。
 署名偽造の期間を延長することにしたため、田中被告は十月二十三日

以降にリコールの会名義の預金口座から七百五十万円を引き出し

署名偽造の費用計約千三百万円のうち、七百万円を山口被告に支払った。


犯行後の状況
雅人被告らは順次、偽造された署名簿を名古屋市の熱田生涯学習センター

などへ運び込んだ

 田中被告は十月二十六日以降、偽造された署名簿に指印を押したほか

雅人被告らにも押させた。山口被告にも費用の未払い分の支払い引き

換えに指印作業への協力を求め、山口被告を通じて下請け会社の関係者

指印を押させた。十一月四日、各選管に偽造された署名簿を仮提出した。
 十一月六~七日ごろ、仮提出した署名数が約四十三万筆にとどまり

法定署名数に達しない見通しであることが報道された。田中被告十一日

雅人被告に架空の会社の従業員を名乗らせた上で、名古屋市内の廃棄物

処理業者に佐賀県青年会館から持ち帰った偽造に関わる書類を破砕処理 

させた